腰曲がり(後弯症)は病気です

3. 歳をとると腰が曲がってしまう原因

ここでは特に腰曲がりと呼ばれる症状の中で、「変性後弯症」と「外傷性後弯症」についてお話いたします。

腰曲がり(後弯症)の原因には、筋肉と背骨の異常が関係します。高齢者では腰背部の筋力の低下が起こり、また背骨の椎間板は軟らかいため、老化により水分がなくなって潰れてしまいます。椎骨の後方は関節があるため潰されにくい構造になっておりますが、前方は支えるものがないので潰されやすくなっています。そのため背骨は前方だけが潰されてしまい、腰が前に曲がりやすい状態になります(図1)。このような状況の下で、さらに腰背部の筋力が低下(特に高齢になると筋肉細胞が少なくなるため)して、後方から背骨を後ろへ引っ張る力も弱くなります(図MRI)。その結果、前に倒れないように引っ張り続けることができなくなり、腰曲がり(後弯症)の症状が出てきます。更に、歩く時に骨盤を後ろに傾け、膝をくの字に曲げてバランスを取らなければなりません(図2)。このため、腰曲がり(後弯症)の状態で、膝を曲げて歩く状態が続くと、背中と腰の筋肉が常に伸びた緊張状態になり、血流低下をおこし、筋肉が貧血に陥ります。そして、筋肉細胞が徐々に死んでしまい、筋力が低下するという悪循環に陥り、腰曲がり(後弯症)が強くなってしまうのです。この腰曲がりを変性後弯症と言います。

また、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により骨が弱くなると、知らない間に背骨に圧迫骨折が起こることがあります。骨折があると背骨の椎体が三角形や台形に変形して前方が強くつぶれるために、強い腰曲がり(後弯症)が発症してしまうことになります。このように骨折による腰曲がりは、若い人の大きな外傷でも起こります。この、骨折が主な原因である後弯症を「外傷性後弯症」と言います。高齢者では、変性後弯症と外傷性後弯症の合併した原因による後弯症も多くみられます。

図1. 前方だけ背骨が潰された状態
図1. 前方だけ背骨が潰された状態
図2. 骨盤を後ろに傾けてしまう状態
図2. 骨盤を後ろに傾けてしまう状態
図MRI. 正常の人の場合:筋肉が厚くて肉質も良好(左)後弯症の人の場合:筋肉は極端に薄くなり扁平化している(右)
図MRI. 正常の人の場合:筋肉が厚くて肉質も良好() 後弯症の人の場合:筋肉は極端に薄くなり扁平化している(
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